この鉋削りテストは「削ろう会」会報 2001.02.14 第17号に掲載されたものです。 |
試験日 平成13年1月2日・3日・4日 場 所 愛知県海部郡甚目寺町(浅草屋工務店 作業所内) 天 候 晴、時々曇り 削リスト 杉村幸次郎 被削材 木曽桧 長さ4.3尺×幅1寸8分/長さ2.6尺×幅1寸 テストした鉋 銘 鍛冶銘 制作 鋼種 仕込み勾配 削り長さ 楽山 寸八 横坂正人 平成12年6月 青紙1号 8.0寸 1000尺以上 こもり 寸六 小森秀樹 平成12年12月 青紙1号 8.5寸 700尺以上 使用した砥石 中砥=高弟#1000・1500・5000・8000・ダイヤスター6000 仕上げ砥=中山/戸前(研ぎ時間30分オーバー) パウダー=三河白・美磨速尋(三河白のパウダーは重宝します) |
今年もお正月早々に削りテストです。 初詣には出かけない私が今年はどう言う訳か若者達に誘われて年越しの初詣に行きました。 おかげで寝不足やら二日酔いやら用事があったりでテストは研ぎも含め三日間に渡りもう大変でした。 今回の鉋は二丁共青紙そして一丁は小鉋です。小鉋のテストは今回が初めてとなります。 まずは「楽山」この鉋、見かけがとてもよろしい。丹念に作られている事が研ぎ肌を見てもよく解ります。何となく期待してしまいそうな魅力ある鉋に仕上がっています。 いつものように薄削りに刃の出を調整していざ!スタート。 200尺軽くパス、400尺も軽くパス、500尺まだまだOK、800尺まだOK、この辺りまで削ってみて、この鉋ただ者ではないぞ!そんな気がしてきました。確かに最初の削りから「少し感触が違うかな?」という手応えはありましたが、研ぎたてだからと思い、さほど気にしなかったのですがここまで来て刃の出は薄削りのまま、しかも削った肌はピカピカのツルツル。ひょっとしたら新記録が出るかも、そんな気がしてきました。そして1000尺まで削りを進めましたが、削った肌は相変わらず良好、でも私、寝不足と二日酔いのためダウン、も〜ダメ〜。作者と鉋に申し訳無いです。 小鉋「こもり」も同時に削りテストをしました。 銘はひらがなで縦に「こもり」の刻印です。この鉋のデザインはシンプルで作者の人柄が出ているようで私はとても気に入ってしまいました。小鉋ということで仕込み勾配が少し立っているためなのか、手応えがやや重いかな?そんな感じ、でも研ぎ味、切れ味共に良く、気持ちの良い鉋屑を量産してくれます。しかし500尺を越えたあたりから削りに少し変化が出てきました。オーバーヒートです。この現象は以前、亡くなられた長原先生とも話をしたことがあります。削っている途中から刃が浮いたような感じで木に食い付かなくなってしまうのです。しばらく休むとまた食い付いて削れる、そんな訳でニ日目に削りは持ち越し、翌朝そのままの状態からスタートします。あーら不思議、切れ味が回復。削った肌もツルツル。そして冷えてる間に一気に削り長さを稼ぎ出します。でも初日ほど長くは削れません。100尺くらい削ったところでオーバーヒート。この症状が出ると、休む時間が削る時間より長くなってしまい、ちょっとつらいものがあります。でもよく考えてみると、小鉋で長時間に渡り削り続けることはまず無いと思いますので、実践ではむしろ気にならないかもしれません。そして800尺付近で私の根気が無くなり削りを断念。まだ削り肌はとても良好なのに。 こちらも作者と鉋にごめんなさい、です。 このオーバーヒート現象、原因は温まった木にあるのか、或いは刃にあるのか、どちらなのか? もし木にあるとすれば全ての鉋でその症状が出るのか、それを物ともせずに削って行く刃があるのか、刃にあるとすればそれは鍛錬とか熱処理でその症状が出ない刃がつくれるのか、小鉋ゆえにその症状が顕著に現れてしまうのか、確かに小さい刃物は熱しやすく冷めやすいという熱処理の難しさはあると思うのだが、大きくなればその点は有利に作用するのか、また解決策はあるのか?これについて皆様の御意見もお聞かせ下さい。 今回の鉋に使用されている鋼材は、多くの鍛冶屋さんがごく一般的に刃物用鋼材として用いている青紙一号なのですが、これが鍛錬によってここまで切れる刃物に仕上がるモノだったことに驚かされ、そしてこの青紙一号の持つ懐の深さに感心させられました。 頑張れ!青紙一号!! |
「こもり」は青紙の鋼に生地と純鉄を鍛造した小鉋です。 豆平鉋36mm/42mm/48mmを在庫しておりますが、お問合わせください。 当社で販売している青紙付 神技は小森さんの製造で青紙の鋼に極軟鋼を鍛造したものです。 これも以前からとても好評です。 葛k産業 石黒敏正 |